墓石のこんな利用法

ロンドン大学東洋語科出身の彼女は流暢な日本語を話す。 日本に四年間住んだことがある。
その時に回転寿司を見て、アイディアがひらめいたのだ。 「これをロンドンでやれば成功するのではないか」と。
東京の銀座や赤坂あたりで寿司を食べれば、一人あたり一万円か二万円はかかる。 ロンドンの日本料理店で寿司を食べても(カウンターに座って好みのネタを握ってもらえば)、ほぼ同じくらいのお金がかかるのだが、イギリス人の常識では一人分の食事の価格としては高過ぎる。
いくらシティの連中が高給取りでも、これでは気軽に寿司を食べるわけにいかない。 そこで、日本でベルトコンベヤー式の回転寿司が成功したように、ロンドンでも、安くて気軽に利用出来る回転寿司の需要はあるだろう、と考えた彼女は頭がいい。
狙いは見事にあたり、「もしもし寿司」は四支店を開くまでに成長した。 彼女は現在、ファンドマネジャーを辞め、経営に専念している。
リバプールストリートの店は、勤務先のすぐ近くなので私もよく利用する。 夜はそれほど込んでないが、昼飯時は列が出来るほどの盛況である。
私が行くのはもっぱら夕方で、これから夜遅くまで残業をする場合の腹ごしらえの場合もあれば、仕事が終わった後にちょいとビールでも飲もうか、という気分になって行くこともある。 ベルトに乗って回ってくるのは、鮭、まぐろ、鯖、たこ、いか、ひらめなどで、そこはイギリスのことだからネタは少ないが、カウンターの中には寿司を握る職人が二、三人いて、客の注文に応じ、ベルトに乗っていないイクラや鰻を握ってくれる。
最近では、ベルトの上に寿司だけでなく、焼き鳥や鮫子、天婦羅なども乗るようになった。 これも悪いものではない。
客の顔ぶれを見ると、日本人もいるがイギリス人も多い。 日本人もシティに勤める駐在員は少なく、学生など若い人が多いようだ。

イギリス人にもそれなりに「通」がいる。 一度、ベルトの上の皿には一切手を出さず、もっぱらカウンターの中に立っている職人にネタの注文を出して、握らせている人を見かけた。
回転寿司で通ぶるのもおかしいが、その断固とした態度がほほえましい気がした。 ところで、ロンドンの回転寿司は「もしもし寿司」だけではない。
シティから出て、観光の中心地ピカデリーやボンドストリートに行けば、「くるくる寿司」(KULUKULUSUSHI)や「YO1寿司」(YO1SUSHI)がある。

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